映画の原作

『素粒子』 ミシェル・ウエルベック

Les Particules élémentaires (1998) 野崎歓 訳

映画で興味を持ったので原作も読んでみました。
部分的には忠実な映画化だけど、全体としては別物かな・・・。

映画は兄弟の物語というだけで終わってしまい、弟の研究云々というのは後日談かおまけみたいな感じで、それほど具体的には考えずぼんやり流していました。

小説はむしろ逆で、兄弟の物語(を通して描かれる現在の社会)がほとんどを占めているにもかかわらず、弟の研究により変わった世界のプロローグという感じなのです。
よって、より後の世界のことや現在の前の世界のこと(あまり筋書きに触れたくないので漠然としすぎですが)に思いを馳せるという感覚です。

小説を気に入っている人にとっては、ドラマの部分だけを抜き出したような映画では作者の意図が伝わらず、とても失望させられたんじゃないかと思います。
でも映画から入ってみると、こういう話だったのかとかえって感慨深いものがありました。

小説だけ読んだのではどうだったろうかとも思いますが・・・それは両方を同時に体験できないのでわかりません。一般論としては映画を先に観ていると、その映像で小説が展開するので受け入れやすく、小説を先に読んでいると、自分の頭で映像化したものとのギャップがあって映画を否定しがちな気もします。まあ、作品によるのでいろいろ考えても仕方ないか。

この作品に関しては映画→小説の順で、私の場合は良かったと思います。
(小説はヒッピーの流れを汲む性の話が映画より多く、その辺にまったく興味を持てない人はどう感じるのか気になりました)

編み物の件は・・・ありました、確かに。
でも映画では編んでいるシーンがあるから発見!と言えるけど、小説では「ポンチョを編んでいる」だけなので厳しいかな~。ちょっと残念、というより映画がそこを省いていないのが奇跡的?

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