怪奇小説精華 【発見】

東雅夫 編(ちくま文庫)

「猿の手」 W・W・ジェイコブズ

願い事を三つ叶えてくれるという猿の手(のミイラ)に軽い気持ちで願い事をしたばかりに・・・という物語。
居間の暖炉の前で、父と息子がチェスを指しています。
息子に勝てない父が少し熱くなったところ、母もつい口を出す場面。
炉ばたでおだやかに編み物をしていた白髪の老夫人まで・・・
猿の手が出てくる前の、一家の日常風景です。

その昔『オーソン・ウェルズ劇場』でドラマ化を見ましたが、編み物のことは記憶にありません。確認しようにもDVD化されていないのが残念です。本国では第11話ですが日本の放送順では第1話ということもあり、特に印象に残っている人が多いようです。

動画サイトで見てみると、『オーソン・ウェルズ劇場』以外の映像化がたくさん見つかります。ちょっと見でも編みシーンがあるものがいくつか! そのうちちゃんと調査してみなくては・・・。
原題:The Monkey’s Paw


「占拠された屋敷」 フリオ・コルタサル

広い屋敷に静かに暮らしているうち四十代にさしかかった兄妹。
イレーネは生れつきもの静かでおとなしかった。朝の仕事が終ると、寝室のソファに腰をおろし一日中編物をしていた。どうしてあんなに編物ばかりしていたのか、ぼくにはその理由が分からない。女性が編物をするのは、それさえしていればほかの事をしなくてもいい格好の口実になるからだと思うのだが、イレーネの場合はそうではなかった。
この調子でまだまだ編み物のことが書かれていて全部は引用しきれません。

農場からお金が入ってくるので特にすることもない兄妹だけど、妹のイレーネは編み物にしか興味がなく、とにかく編んでばかりいたようです。そんな彼らの住む屋敷が少しずつ何者かに占拠され徐々に居住スペースが狭くなってゆき・・・という物語。

この兄妹が受け身体質で「掃除が楽になって編む時間が増えた」とか面白いです。
編み物発見!効果もあるけど、このアンソロジーの中で一番気に入りました。


この本には「ヴィイ」も収録されていましたが、『ロシア怪談集』と同じ訳者のもので、訳違いの読み比べとはなりませんでした。

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