白衣の女 【発見】

ウィルキー・コリンズ著
The Woman in White (1860) 中島賢二 訳

『幽霊塔』の黒岩涙香版と江戸川乱歩版を読んだので、その原作である『灰色の女』(A Woman in Grey)が設定を借りているという本作を読んでみました。
そしたら編み物発見!のおまけが。

※少し内容に触れています。

■あらすじ
ウォルター・ハートライトはフェアリー家の娘たちの絵画教師の職を得た。
ローラとマリアンという2人の娘は両親を亡くしていて、保護者である叔父は美術品にしか興味のない人物。姉妹は父親が違うものの、妹のローラは姉を慕い、姉のマリアンは妹を傷つける者は容赦しないという固い絆で結ばれている。

彼らの住むリマリッジ館は、イングランド北部のカンバランドにある。翌日から屋敷に滞在して仕事をすることになったウォルターは、人気のない真夜中の街道を歩いていた。
すると月明かりの中、白い衣服に身を包んだ女性が不意に現れ、ロンドンに行きたいので送って欲しいと言う。話をするうち彼女がフェアリー家やリマリッジ館を知っていることもわかり、奥様、お嬢様と呼び、かつて親切にしてもらったと・・・。奇妙だが怪しいとは思えなかったので困っている彼女を助け、アン・キャセリックという名前を知る。

ローラに会ってみると、彼女とアンの顔がよく似ていることに気づいた。
やがて2人の間にある感情が芽生えるが、身分の違いゆえお互い口にすることはおろか、態度も示すことはできない。ローラには親の決めた婚約者がいて、これ以上近くにいては辛くなるばかり。婚約者についての怪文書が届いたりと気がかりなこともあるが、マリアンにあとを託し、ウォルターは館を去る。

それからとんでもない陰謀が・・・。

■雑感
文庫本で3冊からなるので大変かなと読み始めましたが、古風な文体ではなくわかりやすいし、何より続きがどうなるか気になって読み耽りました。
ディケンズが発行する雑誌に連載された当時、皆が夢中になったというのも頷けます。

この事件が、関わった人々による手記や口述という形で進んでゆくのも、視点が変わって興味をそそられます。筋書きそのものよりも、優れた人物描写によって思い入れが強まり、当時のことであるし大団円を迎えると思いつつもハラハラさせられました。

本作と『幽霊塔』との関連性は・・・涙香版には少し?
『白衣の女』から『灰色の女』は、タイトルからして似ていますが、涙香版『幽霊塔』となると灰色の着物については出会いの場面で触れられるけれど印象深くはないし、乱歩版は『灰色の女』ではなく涙香版を基にしているので、さらに着衣の特徴はなくなっています。

■編みどころ
ローラの元家庭教師の優しい老婦人ヴィジーさんが、結婚のお祝いにショールを編んでくれます!
ここ何ヶ月もの間
シェトランド産の羊毛でショールを編んでいた。
シェトランドの毛糸で結婚のお祝い、時間もかかっていたとなれば、まさにこの時代、ヴィクトリア朝に大人気となった繊細なシェトランドレースなのでは?と想像します。

そのほかは詳しい記述はないものの、ローラが編み物をすること、アンの母キャセリック夫人が「小さな編み物籠を膝に置いていた。」などがあります。


『灰色の女』も近いうち読むつもりですが、こちらも時代があり女性の著者であるので、編み物が登場するのでは・・・と密かに期待しています。

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