重力の影

ジョン クレイマー著
Twistor (1989) 小隅黎・小木曽絢子訳

超ひもQを使った食べ物で編み物のときに思い出した本です。古本をひと箱いくらで買ったりすると、目当てじゃないものが忘れられて何年も積み上げたままになっていますが、これもそんな中の一冊でした。

そもそも著者は小説家ではなく物理学者で、「このごろ質のいいハードSFが出ないね」と友人にぼやいたら「それはきみが書かないからだよ」という挑発に乗せられて書いたといいます。(謝辞を要約)

物語の発端は、実験装置を作動させると”場”の物体が消える現象が起き、条件を変えて作動させると”場”の物体が地球の植物ではない木製の球体と置き換わっていたというものです。

読み始めてみると、ちょっと苦手パターン。
地球上を舞台にしたSFにありがちな、研究をめぐる政治的な背景など。実社会をモデルにしているから仕方ないのですが、特にハードSFに出てくるとガッカリなんです。本作も前半はそんな感じで大学の研究室に機材を提供している企業の思惑やら、それを利用している教授の思惑やらが出てきます。そんなことに煩わされずにサイエンス中心にできないものでしょうか。

そんな不満がたまり始めたところへ登場人物がサイバーパンクを小バカにするので、こっちも「あんたの言う質のいいハードSFってのを読ませてもらおうじゃないの」って構えちゃったりして・・・。

途中から劇的な展開があって最後まで飽きることはありませんが、著者の「質のいい」とは科学と似非科学の境界がうまくぼかされておりエンタメ性も満たしているということみたいです。ロマンス、子供、動物、サスペンスなどが盛り沢山、視覚に訴える要素が多いのでこのまま映像化してもかなりいけるんじゃないかと思いますが、そんな話はなかったのかな?

サイエンス部分を期待していただけに、都合の良すぎる展開と楽観的過ぎる結末はいただけませんでした。ネタはすごく面白いんですけどね~。

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