映画の原作1冊

『ダーク・シャドウ 血の唇』 マリリン・ロス

Dark Shadows (1972) 尾之上浩司 訳

映画『ダーク・シャドウ』(2012)の原作であるソープオペラの映画化『血の唇』(1970)のノベライズ。

登場人物は大体同じだけど、大違いなのが2012年版で登場する魔女がいないことです。
本ではバーナバスは吸血鬼として現れ、そうなった経緯には触れられていません。
魔女の呪いで吸血鬼にされたという話がないので、シンプルな吸血鬼話です。
(2012年版ではバーナバスも被害者であるということが重要でした)

どちらにも共通していて面白いのは女医の存在ですが、この性格と扱いにも違いがあります。
また、2012年版にあるコメディ要素は感じられず、編み物倉庫も登場しません。(これは当然か)

元ネタのソープオペラを知らないで、1970年版をどの程度評価できるかわかりませんが、ゴシック・ホラーは好きなので『血の唇』も観てみようと思います。

過去と未来2本

プライマー (2004)

資金の無い技術者たちが本業のかたわら、ありものの部品を使いガレージで製品開発していた。
実験しているうち過去へ戻れる装置を作ることができたが・・・。

監督・主演が元は技術畑の人らしく、装置開発のための試行錯誤が延々と続くのかと思えば、途中からあれよあれよと展開し、あとで見返すと意外にこんなところから伏線?という感じです。
過去へのタイムトラベルものですが、タイムパラドックスのことは忘れて見たほうが楽しめます。

同監督が2013年に Upstream Color (邦題不明)を発表しています。
はたしてどんな映画なのか、『プライマー』よりドラマ要素が強そうですが・・・。


僕らのミライへ逆回転 (2008)

立ち退きを迫られるレンタルビデオ店で、磁気によってビデオの映像が消えてしまう。困った店員はリメイク映画と称し、自分たちがホームビデオで撮ったものを客に貸すが、これが大評判になる。

勝手にタイムトラベルものと思っていたら、普通に未来へ向かう話でした。
他愛ないけどミシェル・ゴンドリー監督らしくアナログな手作りメカが出てくるし、がんばりすぎず、ほどほどに和める感じです。

汽車はふたたび故郷へ 【発見】

Chantrapas (2010) フランス/グルジア
監督:オタール・イオセリアーニ
出演:ダト・タリエラシュヴィリ、ビュル・オジエ、ピエール・エテックス

■あらすじ
監督の半自伝的な作品。
ソ連時代のグルジアで映画を撮っていた主人公だが、検閲され勝手な編集に従わなければ上映することもできない。当局に出国を促されパリ行き、自由に映画作りができるかと思えば・・・。

■雑感
ストーリーはともかく、登場人物が煙草とお酒を多用しているのが気になり、何か意味があるのかなと考えてみたけどわかりません。。。

■編みどころ
グルジア時代のフィルム編集室で、助手と思しき女性が小物を輪編みしていました。

ミュージックビデオ 【発見】

Camille – Ta Douleur

包まれたい・・・けど勝手に包まれるのはイヤ。


Weezer – Undone – The Sweater Song

セーターを歌っているのですがビデオには登場しません。
シングル盤のジャケットには白い編み地が使用されています。
普通のメリヤス編みかと思っていたけど・・・よく見ると違っていた!→画像


Sonic Youth – Titanium Expose

0:48あたり・・・これは編んでいるとは言えないな~。


Alice Cooper – Tag, You’re It

ビデオありません。
毛糸玉、編み針で突き刺すなんて歌詞がありますが、ジョン・カーペンター監督の映画『ハロウィン』に言及しているようです。 そういえばアリス・クーパーは『パラダイム』に出演していたっけ。

恋のページェント 【発見】

The Scarlet Empress (1934) アメリカ
監督:ジョセフ・フォン・スタンバーグ
出演:マレーネ・ディートリッヒ、ジョン・ロッジ、サム・ジャッフェ、ルイーズ・ドレッサー

■あらすじ
ドイツの小貴族の娘ゾフィーがロシアの皇太子に嫁ぎ、やがて女帝エカチェリーナ2世となるまでを描く・・・と言っても重たい歴史ドラマではありません。

■雑感
皇太子であるピョートル3世が変人で夫婦生活ができないため、世継ぎを産むために愛人を持たされ、そもそも野心家だったわけではないのに女帝となっていった・・・というような物語も史実も重要ではなく、ひたすらマレーネ・ディートリッヒを鑑賞するための作品。
サム・ジャッフェの怪演によるピョートル3世の印象も強烈です。

皇室をこんな風に描いちゃって大胆だなーと思ったら、実際は映画も真っ青くらいのお家事情だったようで・・・ぜんぜん存じませなんだ。

私はマレーネのおでこの曲線がたまらなく好きなのですが、そのあたりを堪能できる角度が少なくて残念だとか、結婚するまでの乙女演技のわざとらしさが、可笑しいけれどちょっとくどい、なんてことは気になりません。
特にピョートル3世の愛人が「殿下は皇帝になったら私を新しい妻にする」と言ったあと、彼女をしげしげと見やる目つき・・・最初は面白がっている風なのが、やがて自分のするべきことを決意して部屋を出てゆく・・・はお気に入りで、この場面だけでも永久保存版です。

■編みどころ
おまけ的発見として、貴婦人たちが刺繍や何かしながら歓談している場面があり、編み物をしている人もいました。動きがぼんやり見える程度で、たぶんアメリカ式。時代考証がされているかどうかは定かでなく、映画の中のシーンということで。

モーム短篇選(下) 【発見】

サマセット・モーム著
行方昭夫 訳 (岩波文庫)

上巻は植民地での話などエキゾチックなものが多かったのに比べ、下巻は時代も下り、ほとんど現代の感覚です。上巻より短い物語が多いのも違うところです。
人間が見かけどおりではないことや、それに気づく人と気づかない人の話が多く、上巻とはまた異なる面白さがありました。

「冬の船旅」に編み物が登場していました!
おしゃべりで他の乗客から疎んじられている女性が、あるとき黙々と編み物をします・・・。

ゾンビ明暗2本

ゾンビ・ホスピタル (2008)

妹が自殺未遂して病院に収容された。
面会できないことを不審に思った兄は、自分も病院の患者となって妹を助け出そうとする。そこでは院長が患者を実験台に、過激な治療薬の開発を行っていた・・・。

前半はサスペンス、後半はスプラッターアクション。
患者は薬で凶暴化しているだけで、ゾンビではありません。
後半は出血大サービスだけどバタバタしすぎ。どうせならもっとねちっこくしてほしかった。
ラストは一応オチをつけましたっていうだけで、特に良いところは見つかりませんでした。
メジャーな人たちが出演しているので、そちら目的なら及第なのかな。


ゾンビ革命 フアン・オブ・ザ・デッド (2011)

キューバの町で暮らす中年男、友人と釣りをしてうだうだ過ごす毎日。
ある日突然、人々がゾンビになり始め、主人公たちはゾンビ退治を仕事にする。

コメディだけど健全な、久々に本物のゾンビものに会えた感じです。
水中を歩くゾンビや、大量のゾンビを一気に倒す方法など、かなり面白いシーンがいくつもあります。使われているCGがチープなのも、全体の雰囲気とマッチしていて軽妙な味を出しています。
『ゾンビ』へのオマージュに終わらず、キューバらしさが盛り込まれているのが新鮮。
ラテンのこってりだけど明るいゴアと下ネタが楽しめて、ゾンビ愛が感じられる作品です。