おかいこぐるみ! 【発見】

以前ご紹介した「蚕三文記」がコミックスになります。
「おかいこぐるみ!」のタイトルで9/18発売予定。

シリーズ2期も『となりのヤングジャンプ』で連載中
↑あみぐるみ男子はもっぱらかぎ針編みだけど、トップページのイラストの背景はメリヤス編みですね。

前シリーズのネット公開は9/25までとのことです。
まだ読んでいない人は読んでおきましょう~。

ロシア怪談集 【発見】

沼野充義 編(河出文庫)

映画『悪魔の微笑み』(1972)に編み物が登場していたので、原作が収められた本書を読んでみました。


「吸血鬼(ヴルダラーク)の家族」 - ある男の回想より A.K.トルストイ

回想とあるように年配の男性が語る形式なのが映画と違いました。
映画化の方が面白かったというのが素直な感想です。
編み物は登場しませんが、主人公が恋する女性が糸つむぎをしていました。


「光と影」 ソログープ

影絵に魅せられてうつつを抜かしてしまう少年と母の物語。
この作品に編み物が出てきます!
二人は頑丈で不愛想な女中と三人で暮らしているのですが、まるで石のような彼女の顔を見ると、少年はよく彼女が何を考えているのか知りたくなったものだといいます。
・・・長い冬の夜、台所で、冷たい編み棒が、ときおりかすかに音をたてて、彼女の骨ばった手のなかで規則正しく動いてゆき、乾いた唇が音もなく数をかぞえてゆくとき・・・
この人の作品は初めて読みました。妖しいものにとらわれてしまう静かで消え入りそうな様が印象的です。他の作品も読んでみたくなりました。


「ベネジクトフ」 チャヤーノフ

小さな三角形のチップみたいなものの中に人の魂が入っていて、手に入れると他人を自由に操ることができるという話。なかなかユニークです。
主人公たちが身を寄せる家のおばさんが編みます!
・・・家事を終えて私たちのそばに腰をおろしたおばさんが編み棒をせっせと動かして靴下を編んでおり・・・


「怪談」かどうかはともかく、どれも楽しめる作品でした。
やっぱり一番はゴーゴリの「ヴィイ」で、映画化の『妖婆 死棺の呪い』(1967)が気に入っていましたが原作も良かったです。
主人公は神学校の哲学生で、この学生たちの野放図さというかおおらかさが、肝心の魔女との対決より面白いくらいでした。ある学生がどこかから食べ物をくすねて(本人は無意識)ポケットに入れておくと、そのうち別の学生が自分のポケットからのようにこれを取り出して食ってる・・・とか。
中世のウクライナ地方の神学校という話ですが、この神学生のいい加減さが出てる作品って他にないでしょうかね。もっと読んでみたいです(映画でも)。

ヴィイは『レジェンド・オブ・ヴィー 妖怪村と秘密の棺 』(2014)として再映画化されています。予告編ではだいぶ別物のようですが、いずれ見てみます。

恋するよりも素敵なこと―パリ七区のお伽話 【発見】

アンナ・ガヴァルダ著
Ensemble, c’est tout (2004) 薜善子 訳

幸せになるための恋のレシピ』(2007) の原作です。

映画を先に見ているので、本を読みながらも登場人物は映画の中の姿が出てきます。それもほとんど違和感はなく、映画には無かった生い立ちなど人物の背景や後日談もあって満足。映画はどちらかというとカミーユの視点ですが、原作はフランク寄りでした。

編み物に関することは映画より少し多め。

おばあさんが編んでくれるセーターについてのフランクの感想。
「穴だらけ」がどういう状態なのか気になります・・・。
不細工だからもういいよって言っているのに相変わらず編んでくれるセーターも、最近は穴だらけ。

おばあさんからマフラーをプレゼントされたカミーユの感想。
とても気に入るんですけどね。
一目見たときそれは雑巾か何かにしか見えなかった。

フランクが言うには
あんな編み物の名人は、俺の婆さまだけだ!

そんな変てこな代物を、カミーユとフィリベールは喜んで身につけてくれて、しかも頭がおかしい風には見えないという・・・このくだりは重要な気がします。

扉の向こう側 【発見】

パトリシア・ハイスミス著
People Who Knock on the Door (1983) 岡田葉子 訳

■あらすじ
アーサーは17歳、両親と15歳の弟の四人家族で平凡な暮らしをしていた。
あるとき弟が高熱を出し危険な状態になったが、幸いにも回復する。神に祈りが通じたと思い信仰に目覚めた父親は、家族にも信心を要求し始め・・・。

■雑感
ティーンエイジャーが主人公であり、その家族も主要な登場人物というのは今まで読んだ著者の長編とは違うパターンでした。
衝動的な行動を取る主人公が多い中、アーサーが自制心を発揮するのも意外だけど、他の人物のある意味ずさんな描写から来る雰囲気などは相変わらずだと思います。物語はあまりにも想像通りの展開で物足りないような、でも印象に残る作品です。

「扉の向こう側」というタイトルはブレイクスルーって意味合いで、抑圧された主人公が何か突破するような話なんだろうなと思っていたら、原題はそんなんじゃなくて来訪者的な意味でした。まあ、来訪者は「扉の向こう側」から来るわけだし、最後は「扉の向こう側」に出たとも言えるし、原題とは違うけど悪くないのかも。

■編みどころ
アーサーの母方の祖母は悠々自適の毎日を送っていて、遠方からたまに訪ねてきます。
祖母は、ソファに坐り、家で見つけたダークグリーンの毛糸で帽子を編んでいた。毛糸の量が少なくて帽子以外のものは編めないのだという。「おかしな子だこと」編物から目をあげずに祖母はいった。
人の家に来てありあわせのもので編むとは! ぜひ見習いたい・・・。


著者の短編集『11の物語』は、編み物は登場しませんが面白かったです。

同じく短編集『風に吹かれて』に収録の「ネットワーク」の登場人物はセーターを洗っていました。わざわざ書くくらいだから手編みなんだろうと勝手に判断しています。
こちらの短編集は『11の物語』に比べると救いがないダークなものが多く、珍しく超自然なものもありました。

愛しすぎた男 【発見】

パトリシア・ハイスミス著
This Sweet Sickness (1961) 岡田葉子 訳

■あらすじ
デイヴィッドは紡績会社で働く優秀な技術主任である。
収入はじゅうぶんあり、本来の希望の研究職に転職の日も近い。
週末は施設にいる母と過ごすと言って下宿を留守にする彼は、近所では品行方正な天才科学者として通っていた。しかし実際は変名で借りた家に滞在し、愛するアナベルと結婚する日を夢見ている・・・。

■雑感
アナベルはデイヴィッドを恋人として見たことはなく別の男性と結婚しています。デイヴィッドはそんなことは問題にせず、何かの間違いでそうなっているだけで、自分と結婚するのが正しいと思い込んでいます。今で言うストーカーに近いのですが、アナベルを非難することはなく、彼女の夫や理解してくれない周囲の人だけ敵視するのがちょっと違うような気がします。

主人公の性格や、殺人を犯してしまって成り行き任せなところなどは著者のリプリーシリーズに似ています。とばっちりを受けた人は迷惑でしかないけど、同情すべき点も・・・?

■編みどころ
同じ下宿に住む老婦人がデイヴィッドにソックスを編んでくれたり、彼の母にはベッドジャケットを編んでくれたりします。編み物に関する記述はいくつかあり、そのひとつは
・・・何か編み物と本を膝にのせていた。本の上には長方形の拡大鏡が置いてある。彼女はそれをずらしながら本を読み、同時に編み物をするのだ。
すごーい!


このあとに読んだ著者の作品、無実の罪で服役し、受けた仕打ちによって人生が変わった男性の物語『ガラスの独房』(1964)には以下のような場面が。
ヘーゼルには、アイルランド製でオフホワイトの手編みのセーターを買った。
どんな感じだか想像してしまいます。

夜愁 【発見】

サラ・ウォーターズ著
The Night Watch (2006) 中村有希 訳

■雑感
第二次世界大戦後のロンドン。傷ついた、いわくありげな5人の男女に何があったのか・・・舞台は3年前に、さらに3年前に遡ります。こういう手法だと、普通は書き出しより先に進んで物語が終わるのが一般的な気がしますが、この小説はそうではありません。

過去の出来事が描かれ、そういう経緯があってこんな状況だったんだなとはわかりますが、行き止まりに来てから歩いてきた道を見ているようで、これから彼らがどんな選択をするのか、未来がどうなるのかはますますわからなくなり、絶望的でもあるし希望があるようでもあります。

著者の以前の2作品がヴィクトリア朝時代を舞台にしたミステリだったせいか、異なる設定の、いわゆるミステリでない本作の評価は分かれています。
何か大事件が起きるのかと思えばそうではなく、いったいこれは何なのだという感想もわからなくはないですが・・・登場人物たちのその後が読者に委ねられているような、終わった感のない読後が非常に微妙だけど気に入りました。
編み物発見!効果でしょうか? いやいやそんなことは・・・。

■編みどころ
登場人物のひとりヘレンが編み物をします!
・・・戦時中に、兵士のために靴下や襟巻きを編む習慣がついた。いまは毎月、くすんだ色のごわごわの作品を詰め合わせて、赤十字に送っている。現在、編んでいるのは子供用の目出し帽だった。・・・
ほどいて再利用した毛糸を使っているとあります。
また、心配事があり編み物を手に取るものの、ますます苛立ちがつのる場面もあり。

登場人物のひとりヴィヴが乗った列車の乗客について
・・・別の女は編み物をしているのだが、編み針の尻が、両隣の乗客の太股をひっかき続けている。
スラックスを擦られている娘が文句を言って口論になります。

他にも会話の中に編み棒が出てきたり、なかなか豊作でした。


その後、著者の翻訳では最新の『エアーズ家の没落』を読んでみました。
過去3作に編み物が登場しているので、これにも必ずあると思っていましたが期待は裏切られました。でも編み物発見!効果がなくても面白かったです。

ゴシック小説風で、物語は第二次世界大戦後の、かつて隆盛を誇った家の落ちぶれる様を描いています。超自然現象や主人公の心をとらえる館の力を思わせつつ、明確なことは語られません。読み手によって解釈や印象がかなり違うところは『夜愁』と似ています。主人公が男性なのも初めてだし、ヴィクトリア朝やミステリの枠にはまらずこれまでと違った作風で楽しみました。

著者の作品に共通しているのは・・・『半身』と『荊の城』では信じていたものが失われる様があり、『夜愁』と『エアーズ家の没落』ではそれに加えて建築物という形あるものが壊れる様もあり・・・消えてゆくものの儚い瞬間がとらえられているように思います。
寡作な人ですが新作が出ています。翻訳されますように!

熱い空気 【発見】

『松本清張没後20年・ドラマスペシャル 熱い空気』(2012) テレビ朝日系列
監督:松田秀知
出演:米倉涼子、余貴美子、段田安則、野際陽子、高岡早紀

■あらすじ
家政婦の河野信子は、田園調布の稲村家に派遣された。
稲村宅には大学病院の内科部長である夫と妻、3人の子供と夫の母が暮らす。
一見、上流家庭だが嫁姑は対立し、子供はやりたい放題、妻はセコい性格、あることないこと夫に告げ口して家政婦をいびり出してきた。
信子はその眼力で、唯一まともに見える夫にも何かあると確信する。
案の定、夫の浮気相手からの手紙を見つけ・・・。

■雑感/編みどころ
最初に放送されていた時にもチラっと見たのですが、先日の再放送時に編み物発見!

協栄家政婦会という家政婦の派遣会社の詰所的なところで、風邪を引いて仕事に出られない家政婦仲間の加藤シズ(岩本多代)が、右手の人差し指に糸をかけてアメリカ式で編んでいました。
おっとりしたキャラらしく動作もゆっくりで、手編みらしきショール、セーター、ひざ掛けなどに身を包んでいます。

『テレビ朝日開局55周年記念 ドラマスペシャル 家政婦は見た!』(2014)にも加藤シズが登場しているので、編み物をしていなかったかどうか気になります。
再放送されたら要チェックです!


『熱い空気』松本清張 (1963)
原作を読んでみました。
残念ながら編み物は登場しません。。。

実は米倉涼子版のドラマは、なぜか途中を飛ばして結末だけ見ていました。
結末は原作とは違いますが、そこは気になりませんでした。
ドラマ版のあらすじや感想を読むと、それよりも話の中のほうが問題ありそうですね。


『松本清張の熱い空気 家政婦は見た!夫婦の秘密「焦げた」』(1983) テレビ朝日系列
もしかして米倉涼子版はこっちをリメイクしたの? と思って、市原悦子版を見てみました。『家政婦は見た!』が、シリーズとして制作される前の第1作目です。

こちらは原作にかなり忠実です。よって編み物は登場しません(ガクッ!)。
原作と違って、信子と奥さんの妹(山口いづみ)との意思疎通があるところがすごく良かったです。

この『家政婦は見た!』シリーズも見ていないのですが、編み物をする登場人物はいるのかな? 家政婦の詰所というのはいかにも編み物が出てきそうだし。
そういえば成瀬巳喜男監督の『ひき逃げ』(1966)も、主人公(高峰秀子)が家政婦紹介所にいる場面で何人かが編み物をしていましたっけ。

原作に編み物が登場しないので、この物語としての見比べの興味ですが、望月優子の1966年版(関西テレビ)、森光子の1979年版(TBS)も気になります・・・。

追憶の時の扉 【発見】

ダイアナ・ガバルドン著
A Trail of Fire (2012) 加藤洋子 訳

アウトランダーシリーズの外伝です。
本編の続きを首を長くして待っているところに、以前から存在は聞いていた外伝が4篇読めるなんて嬉しい限り。

でもこれがまた謎めいた話があってたまりません。
最後のあれ、いったいどうなってるの? ちゃんと説明つけて欲しい!
・・・と、ますます欲求不満になっています。
本編の関係個所も読み直してみたくなるし。


編み物は、発見!というほど登場しないのですが・・・

本編の主人公からすると甥と義理の娘にあたる2人が、訳あってフランスに向かいます。
その船上に編み物するマダムがいました。

また、娘がとある人物に馬車で連れ去られるという難儀に会う場面で
そのとき、彼の視線が彼女の上に戻ってきて、座席に釘付けにした。編み針を胸に突き立てられたような気がした。
ううっ・・・動けません!

デイヴィッド・コパフィールド (三)(四)【発見】

チャールズ・ディケンズ著
David Copperfield (1850) 石塚裕子 訳(岩波文庫)

3巻に登場したのは編み物かどうかわかりません。
そこには網細工の袋を編んでいるアグネスがいた
え~? かぎ針でネット編みのことかな?
わかりませんね・・・。
これはいったい何なのか、要調査です。

4巻ではユライア・ヒープの母親が編んでいました!
これは『デビッド・コパーフィールド』(1999)の場面と一致します。
映像では人の好さそうな老婦人に見えましたが、小説では編み物をしながら主人公たちを見張っている感じ悪さが際立っています。まあ、すべては息子を思ってのことなのでしょう。

残すところあと1巻・・・あんなことやこんなことが一気に収束する!?


その後:
疑問だったことを調べてみました。
編み物かどうかわからなかった箇所の原書
…there sat Agnes, netting a purse.
うーん・・・やっぱりわからない。
作っているのは小銭入れなのか小さなバッグなのか?
編み方は棒針、かぎ針、ビーズ、組紐!?
私としてはこのようなものかなーと想像しています・・・。
Knitted and Netted Purses

(2014/7/8)