黄昏の彼女たち

サラ・ウォーターズ著
The Paying Guests (2014) 中村有希 訳

雑感

戦争が終わり、フランシスは母との二人暮らしになった。日々の生活は苦しく、傷んできた広すぎる屋敷を維持してゆくためにも二階を貸すことにした。それに応じてきたリリアンとレナードの若夫婦は仲睦まじいかと思えばぎこちなさもあって、フランシスはリリアンのことが気になり・・・と物語は始まります。

第一次世界大戦のあとという時代で、お金の苦労だけではない世知辛さがひしひしと伝わります。家柄は良いけれど没落し貧乏になっている大家とそれなりの収入がある下宿人、世間知らずで不器用なフランシスとおしゃれで繊細なリリアン、などの対比も面白いです。

今までの著者の作品同様、これも微妙なところはありますが気に入っています。
お話とは関係ないのですが・・・登場人物、いや登場猫の名前がココとヤムヤムというのです。ちょっと待て!夫人の名前はリリアンではないですか!これには驚きました。登場と言っても1回出てくるだけなのに名前があり、しかもココとヤムヤム、そしてリリアンなんて偶然ではあり得ません。

何を騒いでいるのかというと、前回の「シャム猫ココシリーズ」の著者がリリアン・J・ブラウンで、シリーズに登場する2匹の猫の名前がココとヤムヤムなんです。
ちょっと検索してみましたが、なぜこの作品に?という疑問は解決していません。サラ・ウォーターズが猫好きなのか、リリアン・J・ブラウンが2011年に亡くなったのでリスペクトの意なのか・・・。

編みどころ

編み物をしているところは出てきませんが

暗紫色のやわらかなワンピースの胸と短い袖はかぎ針編みのモチーフで飾られていた。
テーブルの上には手編みのティーコジーをかぶせたティーポットがのっていた。
また、親密さを編み物に例えたり、毛糸玉を巻く母の姿を想像したりします。編み物が身のまわりにある様子が感じられます。