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本の中の編み物

は編み物シーンあり


ニ都物語

 ★

ディケンズ/新潮文庫
A Tale of Two Cities by Charles Dickens

ロンドン、パリを股にかけた、手に汗握るサスペンスロマンです。じわじわとフランス革命勃発へ向かう気配が、弾劾される身になってみればなんとも不気味。その先鋒となるマダム・ドファルジュが、処刑すべき人物リストを編み物に編み込みます! 独自の暗号のようなものらしいんですが、これはかなり驚きでした。平民の女たちは復讐に燃えてせっせと編み物をします・・・。



レンデル傑作集2「熱病の木」より 

悪魔の編み針

 ★

ルース・レンデル/角川文庫
THE FEVER TREE and other stories by Ruth Rendell

編み物と編み針が大活躍(?)する一編。手を休めているとろくでもないことをし始めるので編み物をしていたのに、それができなくなり・・・というお話。 編み物のことをこんなに詳しく書いてある小説は初めてです。この短編集にはもうひとつ、編み物をしながらミス・マープル張りの推理を働かそうとする老婦人が主役の『絵具箱の館』という作品も収められています。



年とったばあやのお話かご

 ☆ (風車様情報!)

エリナー・ファージョン/岩波書店
The Old Nurse's Stocking Basket by Eleanor Farjeon, 1931

「年とったばあや」って何か変じゃない? などと思いつつ読んでみると、これがまさにそうとしか言いようがないんですね。そのばあやがカゴに山盛りの穴のあいた靴下の中からひとつ選び出し、繕いを終えるまでの間にお話をしてくれるというわけです。 子供たちはお話が聞きたくてしようがないので、なるべく大きな穴があいたものが選ばれるように見守ったり、時にはわざと穴を大きくしたりします。お話の中のひとつ「金の足のベルタ」にも靴下が登場。



農場の少年

 ★ (とらのママ様情報!)

ローラ・インガルス・ワイルダー/福音館書店
FARMER BOY by Laura Ingalls Wilder, 1933

何の前知識もなくこの本を読み終え、あとがきを読んで初めて、主人公の少年が後に「大草原の小さな家」のローラの伴侶となる人だと知りました。つまり、著者が夫の若い頃の物語を書いたわけです。この本は挿絵もいいし、とにかく美味しそうなものがたくさん出てきます。そして何でも手作りです!
読んでから時間が経ってしまい、編み物の部分の記憶が薄れてきました・・・再チェックしなくては。「大草原」のほうもドラマをちらっと見かけたことがあるくらいで(いつも嵐の中で右往左往のイメージ)ほとんど知らないので、この機会に読んでみようかな。



金田一耕助ファイル9 

女王蜂

 ★

横溝正史/角川文庫/1951

改めて原作を読んでみて、よく言われていることではありますが市川昆の映画版ヒロインがいかに駄目だったかわかりました。そしてドラマ版と映画版では少々舞台が異なるところが、意外なことにドラマ版のほうが原作に近いのです。
暗号となる編み図には見慣れない編目記号が書かれています。小説は現在のJIS記号ができる前に発表されていますが、昔はそういう記号があったのか、はたまた存在しない記号ゆえに暗号なのでしょうか!? 著者が編み物を趣味としていたのは知りませんでした。どこかに作品が展示されているなら見てみたいな〜。
その後:よく見てみたらこの記号の編み方は「辷(すべ)り目一目増し」と小説内に説明がありました。



シャーロック・ホームズの愛弟子

ローリー・キング/集英社文庫
The Beekeeper's Apprentice / On the segregation of the Queen by Laurie R. King, 1995

少女メアリが表向きは引退して田舎に引っ込んだシャーロック・ホームズに出会い、やがて愛弟子となって活躍する物語。原作をネタにお話を作るのをバスティーシュというらしいのですが、これもそういったものの一種です。実は原作は読んでいなくて、バスティーシュというかオマージュのようなのを2、3作、あとはTVドラマを見ていただけですが、その程度でもこれはなかなか楽しめました。読みながら頭の中ではドラマのホームズとワトスンが動きます。 著者はこのメアリ・ラッセルシリーズとは別に捜査官ケイトシリーズというのも書いていて、どちらかというと後者が有名なのかな?
編み物は登場と言うほどではなく、毛糸の靴下などが少しです。
その後:続編も読んでみたところ・・・
『女たちの闇』 毛糸の靴下が出てきます。編み物ではないけどヴィクーニャのコート(!)が登場。
『マリアの手紙』 編み物をする登場人物が! ★
『バスカヴィルの謎』 メアリが編み物を始めることについて言及。
というわけでなかなか豊作でした。



凍った街

エド・マクベイン/ハヤカワ文庫
ICE by Ed McBain, 1983

87分署シリーズ。
バレンタインデーのプレゼントとして、刑事が奥さんから手編みの帽子を贈られます。他にもニットはけっこう登場しているので、映像になればいいんですけどね。以前読んだ『はめ絵』より良かったです。



老人たちの生活と推理

 ★

コリン・ホルト・ソーヤー/創元推理文庫
THE J.ALFRED PRUFROCK MURDERS by Corinne Holt Sawyer, 1988

なんというタイトルじゃと思いましたが読んでみるとそのとおり、南カリフォルニアの高級老人ホーム「海の上のカムデン」を舞台に、入居者であるお歳を召した御婦人方が活躍(?)する物語です。シリーズとして九作ほど書かれているようですが、内容の充実度と人物の紹介がてら、やはり一作目を最初に読むべきという感じです。
主要な登場人物の一人が常に編み物をしています! 座って食事をしている時以外はほとんど編んでいます・・・果たして完成したのでしょうか?



わが職業は死

 ★

P・D・ジェイムズ/ハヤカワ文庫
DEATH OF AN EXPERT WITNESS by P.D.James, 1977

アダム・ダルグリッシュ警視が登場するシリーズです。この人の本を読むのは初めてで、有名な『女には向かない職業』くらいは読んでおかねばと思っているのですが・・・。ドラマ化もされているので、機会があればそちらも見たいです。(いや、機会はあったのに見ないでいるうち、ケーブルテレビの契約チャンネルからミステリチャンネルが外されてしまいました。とほほ)
この作品では関係者が一部屋に集められて待っている間、一人の女性が持っていた編み物を始めます。他にもセーターやカーディガンを着ているという描写があるので、それに関しては映像で見ると楽しめるのかも?そうあってほしいですね。



残酷な季節

ウィリアム・G・タプリー/扶桑社ミステリー
DEAD WINTER by William G. Tapply, 1989

ボストンの弁護士ブレイディ・コインが事件に巻き込まれ謎解きをするというシリーズの八作目。七作目までも読んでいないし、今後も読まないような気もしますが・・・。編み物は具体的には登場せず、推理を編み上がったセーターに例えています。完成したものの、あちこちおかしなところがあって最初から編み直しをしてみなきゃならないというんです。断片的な情報(編み方の一部?)から結果である事件(完成写真?)まで、正しい方法で編んでいけばうまく出来上がるけど、中には他のセーターの編み方も混じっているので大変・・・って感じでしょうか。



セーターになりたかった毛糸玉

 ★ (まあきん様情報!)

津田直美 作・絵/ジー・シー・プレス

タイトルそのままの内容なので全然「発見!」じゃないんですけど、毛糸玉が一喜一憂する様子がなんとも愛らしくて良い話でした。毛糸玉を悲しませないためにも大事に編み物しなくっちゃ、と思わせてくれます。おっと、部屋の片隅にほこりまみれで転がっている毛糸玉が・・・いかんいかん。



毛糸よさらば

 ☆

ジル・チャーチル/創元推理文庫
A FAREWELL TO YARNS by Jill Churchill

主婦ジェーンが殺人事件の謎解きをするシリーズ第2弾です。ジェーンは編み物といわず手芸全般それほど得意ではないのですが、クリスマスのバザーのために頑張って膝掛けを編み上げます。苦労したぶん愛着もわいていて手放すのが惜しい・・・でも出品しなくては(涙)・・・しかしこれには嬉しい結末が待っていました。
膝掛けはかぎ針編みでしたが、他に編みかけの赤いセーターも登場します。ジェーンの友人がタッティング・レースでクリスマス飾りを作ることを聞いて、他の友人が「失われた技術だと思っていた!」 なんて言うあたりも面白いです。



下り”はつかり”

鮎川哲也/創元推理文庫

短編傑作選IIの表題作です。イニシャル入りセーターが登場し、これはアリバイ作りのトリックにも関わっています。他の作品で記憶にあるのは『ペトロフ事件』 で、 満州が舞台になっていて編み物をしているロシア人女性の描写があったように思います。鮎川氏は戦前の満州や大連で少年時代をすごしたとの事、編み物をする光景も目にしていたのかもしれませんね。



ゆかいなホーマーくん

 ☆ (とらのママ様情報!)

ロバート・マックロスキー/岩波書店 (児童)
Hormer Price by Robert McCloskey, 1943

アメリカの郊外の町でのお話。てっきりホーマーくんが事件を巻き起こすのかと思っていたら、彼は案外実際家でしっかりしており、騒動の元は大人達のようです。
毛糸くずを集めて巨大糸くずボールを作るという話がありました。糸くずにしてはやけに大きいんですけどね〜。流行に合わせて編み足したりほどいたりしてスカート丈を調節する素敵な女性も登場し、お母さんたちが集まりで編み物をしているという背景もあります。



猫は殺しをかぎつける

リリアン・J・ブラウン/ハヤカワ文庫
THE CAT WHO SAW RED by Lilian Jackson Braun

新聞記者クィラランとシャム猫のココが謎解きをするシリーズの第一弾(?)です。登場人物の一人が、編み物の残りの毛糸玉を猫の気晴らしのために持ってくる、というくだりがあるだけなんですが、その後少し猫と毛糸がからむ場面がありました。



ムーミン谷の夏まつり

 ★

トーベ・ヤンソン/講談社 ムーミン童話全集4
FARLIG MIDSOMMAR by TOVE JANSSON, 1954

ムーミン谷が洪水に見舞われるお話。ムーミントロールとスノークのおじょうさんはみんなとはぐれてしまい、行きついた先で出会ったフィリフヨンカと一緒に投獄されてしまいます。三人を助け出すのが小さなヘムルなんですが、彼女は特に何を編むでもなく、とにかく編み物をしていると気分が良いのだそうです! 彼女が編み物を手にしている絵もあります(実は針が1本しか描かれていないので、棒針編みと断言はできないのですが)。
ところでムーミンママの裁縫籠の中にはハサミ、ボタン、針などとともに毛糸の束があるにもかかわらず、編み物の気配は無いんです・・・他の作品には登場するのかな?
その後:アニメ『楽しいムーミン一家』の第30話「喜びの再会」をチェック・・・小さなヘムルのイメージは違っていましたが、棒針編みをする様子がじっくり描かれていました!  ★.
それから『ムーミン パペット・アニメーション』をチェック・・・またまたイメージと違っていましたが、こちらはかぎ針編みをしていました。やっぱりかぎ針?? ヘムル以外の登場人物が編むシーンやニットを着ている場面もあり。 ★.
さらに『ロシア版パペットアニメ』をチェック・・・ムーミンママが編んでいました! ★.
というわけでとっても豊漁。



ふくろ小路一番地

 ★ (とらのママ様情報!)

イーヴ・ガーネット/岩波少年文庫
THE FAMILY FROM ONE END STREET by Eve Garnett, 1953

ふくろ小路一番地に住む、父はごみさらい屋、母は洗濯屋という子だくさん一家のお話。労働者階級を舞台にした童話という事で、発表当事は物議を醸したようです。子供たちそれぞれのエピソードがあって、線画の挿絵も良い味です。(ケートが空想にふけっている挿絵がかわいい〜)
新聞の「懸賞あみもの」というものがあり(編み物コンテストってことかな?)、それに応募しようと張り切っているおばさんがいて、子供たちを連れて海辺へやってきて編み物をしていたら、大波が編み物本やらお菓子やらをさらって行ってしまいます。ケートは上の学校へ行くための新しい帽子をさらわれてしまい大ショック! なんですが、ちゃんと取り返してお釣りも来るという楽しいお話でした。



NかMか

 ★

アガサ・クリスティー/ハヤカワ文庫
N OR M? by Agatha Christie, 1941

第二次大戦中のイギリスで、ドイツのスパイを捜索するため下宿屋に潜入するおしどり夫婦の活躍。
冒険好きな夫婦の妻のほうは編み物が得意で、カーキ色の毛糸でバラクラバ帽を編んでいます。・・・バラクラバ帽ってなんじゃい!? いわゆる目だし帽のようなんですが、目のところは2つ穴じゃなくて横長の1つ穴になってて、たぶん図のようなものではないかと。今はこういうの、あまり手編みで編む機会はないかな?
その後:ハヤカワ文庫『おしどり探偵』(創元推理文庫版では『二人で探偵を』)という夫婦が若い頃のお話を読んでみましたが編み物は登場せず。これってドラマ化されていたんですねぇ。知らなかった!



はめ絵

エド・マクベイン/ハヤカワ文庫
JIGSAW by Ed McBain, 1970

87分署シリーズ。
本編の事件が起きている最中、巷ではこんな事件も起きていた・・・という6月の風物詩的に描かれた事件の中に、公園で鳩に餌をやっていた老女が編み針で突然に若者を襲う、というものがありました。ウールのショールを掛け、バッグには編みかけのセーターがあり、鳩に声をかけるいかにも優しげな婦人なんですが・・・まあ、世の中やりきれないことが多いよ、ってことなのでしょう。。。



アリバイのA
騙しのD

スー・グラフトン/ハヤカワ文庫
"A" IS FOR ALIBI, "D" IS FOR DEADBEAT by Sue Grafton, 1982,1987

女性私立探偵キンジーの活躍を描いたシリーズの第1、第4作目。現在Pあたりまで書かれているらしいです。
Aには凝った編み目のセーターを着た年配の女性の描写がありました。それはおそらく本人の手編みで、ケーブル編み、麦穂模様、縄編み(ケーブル編みとは違うの?)、ポップコーン編み、ピコアップリケ(何でしょうね?)で淡いモーブ色をしている、というのがほぼ全ての描写です。アラン模様だろうということで納得しています。
Dでは主人公が叔母の遺品である銃を盗まれ、独自の生活信条を持った叔母に育てられた頃を回顧する場面で、編み物を習ったことが忍耐と観察眼を培うのに役立ったとありました。
主人公の性格形成に編み物が深くかかわっていそうですが、文章としてはほとんど登場しないので想像を逞しくして読むしかないですね(そこまで感情移入できるかというとちょっと疑問)。著者も編み物するのかな?


Last modified: 2004/07/04
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