スクワーム 【発見】

リチャード・カーティス 著
Squirm (1976) 関口幸男 訳

凶暴化した大量のミミズと正気を失った男を相手に生き抜く話。
映画に編み物が登場していたので小説版も読んでみました。

原作かと思っていましたが、実際はノベライズではないでしょうか。
訳者あとがきに「本書は映画にもなっており」とあるので、そうも解釈できます。でも海外サイトで原作者の記載が見当たらないのでどうなのかな、と思うのです。
それはともかく、まったくと言っていいほど映画と同じ内容だけど、映画にはない部分もありました。

小説のプロローグには、ミミズ養殖場(映画はゴカイとなっていましたが小説はミミズ、以下M)の息子ロジャーが少年時代に体験した出来事が書かれています。

母が亡くなった悲しみや、それまで何とも思わなかったMが嫌いでたまらなくなったこと。研究熱心な父がMに電気ショックを与える実験中、食いつかれた恐怖・・・こんなことがあったからおかしくなったのかな、と思えるような話です。以来15年も、やはりどうかしている父の手伝いをしながら暮らしていたのですから、さぞや・・・と気の毒にもなります。
ロジャーが逞しくてハンサムな青年に成長し、近寄りがたい不気味さがなければ町中の女の子が夢中になるであろうという件は・・・えーと、映画版では問題あり。

映画ではロジャーがいきなり暴走したように見え(実際は少年時代の心の傷が深く、鬱屈したものがあってまともじゃなかった)、ヒロインの母が心ここにあらずのような状態なのも(夫が亡くなったという説明があるにしても)不可解な感じなのです。
その辺りも納得いきました。というか、描けてない映画がヘボすぎるとも言える?

編み物も補完されています!
ヒロインの母が知人の依頼でショールを編んでいる、というのは同じですが、依頼人は編み物は好きだけどウールにアレルギーがあるので、もっぱら化学繊維のオーロンを使っているとの事。だから娘用にウールのショールを編んでもらっています。

毛糸については、映画では違う色の糸を引き揃えて、かなり疑問な色合いのものになっていましたが(これはこれで、暗い画面の中では存在感あり)、小説では赤と緑の糸で、緑の花模様をあしらった・・・とあるので、地は赤なのかも。映画では棒針編みですが、小説では「金属の編み針」というだけなので、花模様ということからかぎ針編みの可能性も?

など、想像をたくましくできるほど編み物のことが詳しいのが不思議で。
この物語にそこまで書きますか?という素朴な疑問。
どういう経緯なのか非常~~に興味があります。

編み物を発見するまでは価値を認めていない、どちらかと言えば気に食わない部類の作品でしたが、今では結構お気に入りに・・・。
特に小説の終盤に面白い一節があり、そこを何度も読んでしまいました。
ヒロインの恋人ミックが、変わり果てたロジャーの姿を見て
おお、なんということだ。
目があるのはこんなものを見るためか!
というのです。
原書にどう書かれているのか(よくわからないと思うけど)読んでみたいです。

この最大の見せ場の雰囲気は映画ではうまく出ていません。
ロジャーがどういう状態なのかは、文章のほうがよくわかります。映像ではMの物量表現は圧倒的ですが、ロジャーはなんだかしぶといってだけで普通なんです。

というわけで、小説版は映画を補って余りあるもので、おおいに収穫がありました。


あらあら、語っちゃって・・・。
映画の感想を書いたときとテンション違いすぎ~。

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